私たちが生きているこの時代は、「近代(モダン)」であるともいえるし、そうでないともいえます。いちおう「近代」の原則の上で動いてはいるのですが、このアプリケーションはヴァージョン・アップを繰り返したあげく、何だかよくわからなくなっているからです(だから人によっては今の時代を「近代だけど近代じゃない」という意味で「再帰的近代」とか「ポストモダン」とか言います)。
さて、20世紀初頭の英米では、実験的で斬新な文学作品が数多く書かれました。それらの作品は、近代以前のそれとは違う新しいものとして「モダニズム」と総称されます。しかし本当をいうとそれらの作品は、「近代」の枠組の中におとなしく収まってくれません。モダニズムの作品は、本当は「近代」の初期設定そのものをこっそり書き換えてしまっているのかもしれず、「ポストモダン」の現在になって初めて理解できるものだったり、あるいは未だ知られざるまったく新しい可能性を暗示しているかもしれないからです。そうした「モダニズム」の文学作品(具体的にはジェイムズ・ジョイスやヴァージニア・ウルフの作品)の読解と研究が、私の専門分野です。
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