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福田ゼミ

世界の今を知り、なすべきことを考える
平和を追究するために、戦争について学ぶ

国際関係論(福田ゼミ)

指導教授:福田 宏

不安定化する世界のなかで平和を追究する

 残念ながら、現在の世界は混迷の度を深めている。ウクライナやパレスチナは言うまでもなく、少なからぬ地域において紛争が発生し、多くの人が犠牲になっている。国際関係について真面目に考えれば考えるほど悲観的になってしまいそうだが、そうであるからこそ、世界を知り、より平和的に生きる術を見いだすことが必要である。もちろん、それは簡単なことではない。このゼミでは、紛争や温暖化、民主主義や独裁といったさまざまな問題を取り上げ、ああでもないこうでもないといった議論を重ねつつ、自分なりの知見を持てるようにすることを目標としている。

先人の知恵から学び、21世紀の現在に応用する

 ゼミの前半では、国際関係論の古典的著作を半年かけて読む。例えば、マイケル・ウォルツァーの『正しい戦争と不正な戦争』(風行社、2008年)という本を読んだ際には、どのような戦争が「正しい」と言えるのか、そもそも、「正しい」とされるような戦争はありうるのかといった点について検討した。アメリカの政治哲学者が1970年代に発表した本書は、分厚く難しい専門書だが、そうした本物の議論に触れることが大きな糧になるはずである。

 現在ではSNSやAIなどさまざまなツールを使って情報を集められるが、問題を解決するための便利な「答え」が存在するわけではない。ネット空間では、真偽が定かではない情報や、断片的かつ単純化した議論が飛び交っており、かえって危険ですらある。「分かりやすい」情報を探しているつもりが、いつの間にか「分かる」情報だけに頼るようになり、それ以外は「正しくないもの」として排除してしまうかもしれない。世の中の複雑さをX(旧ツイッター)の140字だけで理解することは不可能である。複雑なものを複雑なものとして捉えるためには、それなりのまとまりをもった文章、つまり本を読むことが必要不可欠である。

自分で課題を選び、世界の問題を解明する

 ゼミの後半では、各自がテーマを選び、自らの力で調査を進めていくことになる。このゼミでは、国際的な問題に関することであれば、どんなテーマを選んでも構わない。ウクライナやパレスチナについて検討する学生もいれば、スポーツや音楽をテーマとする学生もいる。例えば、サッカーの試合が戦争の引き金になったというラテンアメリカの事例や、紛争後の民族和解を推進するうえでサッカーが重要な役割を果たしたという旧ユーゴスラヴィアの事例が挙げられる。冷戦期の旧ソ連・東欧では、民主化運動においてロック音楽が象徴的な意味を持った。もちろん、テーマによっては調べることが難しかったり、外国語の文献を読む必要があったりするため、具体的なトピックについてはその都度相談しながら決めることになる。

仲間と議論を深め、8000字の論文を書く

 ゼミでもっとも重要なのは、学生同士のディスカッションである。紛争などの難しいトピックを扱っているからこそ、お互いの意見をぶつけ、論争をしてほしいと考えている。とはいっても、最初から活発な議論ができるわけではない。このゼミでは毎回くじ引きを行い、3~4人のグループに分けたうえで討論を行っている。少人数での率直な話し合いを経たうえでグループ毎の意見をまとめ、そこから全体でのディスカッションに繋げていくようにしている。

 また、このゼミでは一年の締めくくりとして8000字の論文(ゼミ論文)を提出してもらっている。多くの学生にとっては、400字詰め原稿用紙20枚相当の文章を書く機会は、これが最初で最後かもしれない。なかなか大変なミッションだが、論文を書くことによって、論理的に物事を捉える力、そして、課題を解決する力が身につくようになる。3年生中心のゼミだが、学生によっては4年次も引き続きこのゼミを履修し、さらに大きな論文、すなわち卒業論文を書く人もいる。

あらゆるものがグローバルにつながっている ~ バタフライ・エフェクト

 ブラジルでの蝶(バタフライ)の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす。元々は気象現象を説明するために生み出された表現だが、これは国際関係論でもよく使われる言葉である。グローバル化が進んだ現在においては、食糧やエネルギーの不足、地球温暖化、感染症、経済危機、難民といった現象はすべて相互に関連している。遠く離れた外国で起きている問題であっても、他人事として片付けることはできない。一人ひとりの力は限られているが、世界の今を知り、なすべきことについて共に考えていければと思う。

 このゼミでは、将来海外で活躍したいと考え、メーカーや外資系企業への就職を希望する学生もいるが、すべての人が最初から明確に進路を決めているわけではない。とはいえ、あらゆるものがグローバルにつながっていることを考えれば、たとえどんな職業であっても、このゼミでの学びは何らかの形で活かされるはずである。

メッセージ

 インターネットによって情報を得ること自体は簡単になったが、世界は依然として広いままである。日本や外国のさまざまな地域を実際に訪れることによって、あるいは、映画や小説などを通して、多様な文化や価値観に触れて欲しいと思う。