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永井先生

17世紀に完成され
現代に続くフランス語。
フランス演劇を研究。

法学部教授

永井 典克
(ながい・のりかつ)

仏語

 とかく難しいと思われがちなフランス語。永井先生は、フランス語はラテン語を整理して類型化した言語であり、英語より厳選された単語を使った言語だと語る。

 永井先生がフランス語に引かれ、興味深いと思う最大の理由は、17世紀以来、全くと言っていいほど変わっていないという事実だ。そのため、今でも400年近く前の書物などを、それほど苦労せずに現代人が読むことができる。それは、1635年に設立されたアカデミー・フランセーズという機関がフランス語を確立し、それによって守られてきたためだ。

 ただし、言語が一本化されるということは、地方言語、方言が消えるという弊害がある。方言が無くなるということはその土地の文化が無くなるということ。近年はそれを取り戻そうという動きもあるという。それだけ、フランスという国は自国の文化を大切にする国であり、文化の基本的な部分である言葉を大切にしている。それが魅力のひとつと語る。

 演劇好きである永井先生の専門は、17世紀フランスの演劇。資料に目を通すだけで17世紀当時の演劇事情が身近に感じ取れ、生き生きと伝わってくるのもフランス語ならでは。数年前までは、17世紀の演劇の中でも特に悲劇に焦点をしぼって研究してきた。その大きな理由のひとつに、喜劇はある事象を揶揄する、ある事象との比喩で笑いを生むということが多いため、理解が難しい。例えば、日本で「『ドラえもん』ののび太」と言った場合、どんなキャラクターかは多くの人が想像でき、その位置づけが分かる。つまり、喜劇を楽しむには、共通体験、予備知識が必要となるので、なかなか踏み込みにくい分野なのだ。

 しかし、数年前からは喜劇も研究対象として取り上げている。理解するために調べなければならないことも多いが、やはり笑いは国民性も出るもの。政治や政治家も対象として出てくるため、非常に興味深い分野であることは確か。やりがいのある研究だという。

子どもの頃の趣味は昆虫採集。それが高じて?今はメダカに夢中

 昨年、2011年の夏にメダカを3匹購入したところ、すっかりメダカにはまったという永井先生。思っている以上に個性があり、お互いを認識している様子が見て取れ、好みや個性がしっかりあるということが分かってくる。仲睦まじいカップルだったのに、メスが死んでしまったところ、残されたオスが餌も食べなくなって、メスを探すように水槽の壁のところで激しく上下を続けたという。「今では100匹近くになってしまいました」と笑う。

楽しくフランス語の基本を学んでフランス文化の幅広さを実感

 永井先生のゼミでは、主にフランス語の基礎を扱う。フランス語に親しんでもらうために、フランス語が関わるさまざまなものを教材として、取り入れている。

 フランスで日本のマンガがとても人気があることは耳にしたこともあるかと思うが、もともと、フランスでもフランスのマンガ、コミックはとても盛んだという。

 フランス語は横書きのため、吹き出しが縦書きの日本とは、本の開き方が逆になる。そこで当初は、単純に反転させて翻訳した吹き出しを入れていた。しかし、まもなく日本のスタイルをそのまま取り入れ、吹き出しに仏文を入れて出されるようになった。日本マンガのフランス語版は単語を比較して理解しやすいので、とても良い教材。永井先生も留学時代、初期の頃には日本のマンガを古本屋などで買って読んでいたそうだ。

 フランスのマンガでは、歴史的なものを扱った国民的な作品である「アステリクス」、ベルギーの「タンタン」といったものが有名。ただし、カラー印刷故に値段が高く、日本のように1色で安価に手に入るものではなかった。近年は日本のマンガの影響もあり、日本スタイルで、日常を扱ったとても身近なテーマのマンガも増えてきたそうだ。

 言葉を知ると共に、日本のマンガがフランスではどのように受け入れられ、どんな部分を楽しいと思うのか、共通項や違いを知るということは、フランスの文化を知る上でもとても理解しやすいもの。ただし、マンガといっても文学的表現を取り入れていることも多いので、そこまで踏み込むのはかなり上級と言っていい分野になるという。 

 「アルセーヌ・ルパン」という傑作を生んだフランスは、ミステリー小説も盛んで面白いものが豊富。マンガやミステリー小説など、親しめる分野から、文化や習慣として興味深い内容だったり、分かりやすい表現だったりした部分を抜粋して取り上げている。

 その他にも映画や音楽など幅広く取り上げ、中には移民の歴史が背景としてあるフランスのラップ、フレンチラップを取り入れたこともあった。「様々な素材で、17世紀から現代まで、多方面からフランス語とフランスの文化を知り、学んでもらいたい」と語る。

メッセージ

「法学部では、英語の他に、フランス語、ドイツ語が選択必修科目です。なぜ、大学で第2外国語を学ぶのか。一つにはさまざまなチャンネルで情報を得るためだと思っています。また、外国語に触れることは異文化に触れること。英語以外でも文を読めたら、わくわくするような体験になるでしょう。みなさんも積極的にチャレンジしてほしいと思います。」